2001年度九州大学建築学科卒業設計 [松尾桂一郎君]

「Memories & Futures」〜a vision for new WTC〜

2001年9月11日、ニューヨークの世界貿易センタービル(WTC)は衝撃的な自爆テロによって50万トンの瓦礫へと姿を変えた。 WTCの崩壊は、立地しているロウワー・マンハッタンの都市機能を大きく低下させた。 約5万人が労働可能なオフィススペースが損失しただけでなく、地下鉄網も大きな被害を受けた。 経済的な損失、精神的な被害も計り知れない。

こうした現状を踏まえて、WTCの跡地利用を検討した。その際に設定した目標は
@ロウワー・マンハッタンの都市機能を回復させ、より強化する。
Aいかなる宗教にも属さない、世界人類のための慰霊空間をつくる。 この2点である。

コンセプトは「多様な都市機能によって、世界のための慰霊空間を包みこむ」である。

都市機能の回復にあたって、倒壊したWTCの床面積を回復させつつ、中央に慰霊空間となるヴォイドを創出するよう、 ヴォリュームの再構成をおこなった。独立性の高い慰霊空間を実現するため、敷地の四隅に、くの字型の複合ビルを4棟計画した。

4棟のビルは互いに空中経路によって連結される。このことで垂直の袋小路だった動線が3次元ネットワークへと拡張され、 災害時の非難経路の選択性が飛躍的にアップする。また、空中経路による連結は構造的にも安定性の向上につながる。

本計画で最も重要な空間は慰霊空間である。訪れた人々はビルに囲まれた慰霊空間に立ち、直径約60mのメモリアル・ボールを目にする。 内部に入った人々は、巨大なガラスコーンと、その頂部から差し込む劇的な光に包まれる。 ここには巡礼に訪れた人々が想いをつづるための端末機が設置されている。 入力されたメッセージは、世界中からウェブを介して集められたメッセージと共に逆円錐形のガラスコーンに表示され、 螺旋を描きながら上昇してゆく。やがてそのメッセージはメモリアル・ボールの頂部から溢れ出し、球体の表面を覆うだろう。 寄せられるメッセージは次から次へと積層し、球体の表情は絶えずアップデートされてゆく。

いかなる宗教にも属さない、世界のための慰霊空間が、マンハッタンに出現する。